イノチの値段

今日久しぶりに「心臓移植」なんて言葉をきいたのでチョイト。
学生のときに内科で受け持った症例で、40代男性、急性心筋炎で左心補助人工心臓(LVAD・エルヴァド)離脱後の患者さんがいた。12月に発祥して2月に意識が戻って、私が受け持ったのは5月。LVADってのはまぁ、人工心臓。心機能が落ちちゃって働くなった人の心臓に管入れて、空気の力で心臓の代わりに血液を全身へ送り出す機械。一人暮らし用の冷蔵庫位の大きさの機械で、まぁ押して歩くこともできます。
一生それを入れて普通の生活ができるはずもなく、かといってそこまで落ちた心機能が復活するコトも難しく、まぁ心臓移植を待つ間のつなぎの役割として使っていたわけです。
心臓移植の話をされて、その患者さんは拒否。何度も説明されて、それでも拒否。
「何千万円も掛けて、人の心臓貰ってまで、俺があと何十年か生きる価値あるのかなぁ、なんて思って。腎臓とかならいいけど、心臓って、なんか、他人の心臓もらうのってどうしても…」
22歳の私を目の前にその患者さんは涙を浮かべながらその時の話をしたわけです。彼は幸運にもLVADを離脱できていて、その後無事退院したみたいですが。

彼には確か植込型除細動器(ICD)も入っていて、心室細動だとかが出るとERでよく「ボーン」って人が跳ねてるアレが体内に埋め込んであって勝手に作動するわけです。意識がある時だと相当痛いみたいだし、それが作動するのも怖がっていました。(※大抵の患者さんが怖がってます)最近知ったんだけど、あの機械も高級車が買える位するわけで。。

自分以外の人の命になら心の底から「お金の問題じゃないじゃん」といえるんだけど、さて自分の命にいくら払えるときかれたら、なんだかやっぱりよくわからないかもしれない。
なんか、大変な職業を選んじゃったなぁ。。