輸血

今度は病棟の話。担当患者さんの貧血がdrugでは回復せず、どうやら輸血をした方がよさそうです。今日ご家族がいらしたので、患者さんとご家族と一緒に班長からムンテラ。ご本人は「やらなきゃ仕方ないだろう」、ご家族もまぁ、拒否も反対もしないんだけど、「肝炎ウィルスとかエイズが心配」とのこと。(患者さんの年齢からいって、肝炎はともかくエイズは発症前に老衰だろう、と思いましたが、ペーペーの私は黙っていました。)
無事承諾書をいただいたのですが、班長も病棟を去った後に、ご帰宅したご家族より私の院内PHSに電話が。「○○さまのご家族からの電話をつなぎます」という交換台のおねーさんの声で一気に緊張が高まりました。。
やっべー何言われるんだろう。何言われちゃうんだろう?輸血ヤダとか言われたらどうしよう??
家「今日の輸血のご説明のことなんですけど」
う(キターーーーーー!!!)
家「家族で○型(←患者さんと一緒)の者がいるんですが、その血液を使うことはできないでしょうか?」
う(ほっ…)
う「ご親族の血液で輸血、ですか?それはその、肝炎ウィルスとかエイズなどの感染症がご心配だから、ということでしょうか?」
家「えぇ…やっぱり最近話題になりましたからねぇ…」
う「そうですね、ご親族なら感染症の心配がない、というお考えですね。確かにご親族ならその点は安心、と思われたんだと思いますが、感染症以外にも輸血の副作用というのが御座いまして(もちろん説明しましたよ…)、昔は確かにご親族からの輸血ってやってたんですけど、GVHDという輸血による免疫学的な重大な副作用が、かえってご親族からの輸血の方が頻度が高いんですね。ですので、今は日本ではご親族からの輸血というのはやっていないんです。ですので基本的には日赤の血液での輸血になってしまうのですが。」
家「あぁ、そうなんですかぁ。わかりました。」
ということで無事解決。知ってるコトでよかった…。(ていうか、GVHDってナンデスカとか詳しく突っ込まれなくてよかった…。)
そういえば学生時代に同席したムンテラでも、もっとひどい(って言うのもナンですけど)のがありました。
手術をするときは、輸血の予定がなくても一応同意書を取って輸血用の血液を用意しないと手術室に入れてもらえません。ところが、ご本人とご家族が「親族の血液を使えないでしょうか?」と。私が今日した様なのと同じ(もっとわかりやすい)説明を担当医師がしたのですが、「家族の血のせいで死ぬならともかく、見ず知らずの他人の血のせいで死ぬなんて耐えられない」と。アノゥ、死ぬと思うなら輸血しませんが……。起こりうる副作用(この場合スクリーニングで引っかからない、輸血による"感染症")を説明すると、時としてこういう本末転倒な事態が発生します。
そういえば私の祖母も、「病院で薬を貰ったけど、副作用で肝臓が悪くなることがあるからたまに血液検査でチェックしましょう」という説明を受け、薬を飲むのをやめたそうです。なんの薬か忘れたけど。。
一応、"治療効果"と"副作用と頻度・重篤さ"を天秤に掛けて治療効果の方が大きいと思うから治療をするわけなのですが……。気持ちはわかるけど。