長嶋茂雄監督の脳梗塞

父が長嶋監督の大ファンでして、まぁ私も幼い頃から長嶋監督がテレビに出てるとそれを見ながら育ってきたわけです。まぁ私や父の長嶋論なんてダレもここに期待してないでしょうから、脳梗塞について。
あ、まず「脳卒中」についてですが、脳卒中とは脳血管障害のことで、その中には高血圧などが原因で血管が破ける「脳出血」や「くも膜下出血」と血管が詰まる「脳梗塞」があります。脳梗塞は更に、その場で血栓ができていきついに詰まりきってしまった「脳血栓」と、どこか他の場所でできた血栓が血管の中を移動して脳の血管でしゅぽっとはまってしまった「脳塞栓」があります。
長嶋監督は、脳塞栓ですね。
不整脈というのは心臓が正しいリズムで脈を打たないので、血流がよどみます。よどむ血液は固まりやすく溶けにくく、そのある程度の大きさのかたまりになったものが飛んでいって脳に詰まったのが、今回の「脳塞栓」だと。
脳卒中」とまとめる言葉がある位ですから、最近でこそCTやMRIで一発で分かりますが、これらの鑑別は症状だけでは難しいです。
国試で経過・症状がつらつら書いてあり脳血管障害を疑い画像診断所見が書いていない問題で一問目は「まず行うべき検査は何か」で、答えは「CT」です。MRIですと初期の病変は見えないし、なによりも急性期に時間の掛かるMRI検査よりはすぐに行えるCTが優先されます。しかしごく最近のMRI拡散強調画像ではCTにも写らない超初期の脳梗塞も捉えることができ、またMRIの機械自体の性能があがり以前より短時間で行えるようになったこともあり、脳梗塞が積極的に疑われる臨床経過の場合で設備があるのならばMRI検査を優先させるのもあながち間違いではないようですがまぁ国試的には選択肢にCTがある限りCTでいいと思います。

なんかテレビで「軽くはない」とか「重くない」とかビミョーな言い方してますが、まぁビミョーな病気ですよね。脳は難しい言葉で言えば「機能局在」ってのがはっきりしてまして、「この部分はこの働き」というのが超はっきりしてるんです。長嶋監督の場合ですと「左の大脳」。(どこぞの記事で「大脳の左」となっていましたがそれだと意味がわかりません)大脳と言っても更に運動野だの感覚野だの脳のしわを境に機能が別れていまして、「右半身麻痺」が"動かせない"運動麻痺のことだとすると左前頭葉がやられた、ということですわね。(脳と体は左右逆です。)場所によって大切な場所と大切じゃない場所があります。はっきりいって右半身麻痺は死にませんよね。話せなくなっても死にません。しかし特に長嶋監督のような方にとって運動が制限されるのはとても辛いことですし、勿論、言葉(言語野は多くの人で"左"大脳にあります)を失うのもご本人にとっても全国民にとっても大きなショックです。

いわゆる植物状態ってのは大脳が機能していない状態ですが、栄養さえ与えていれば生きていられるわけです。大脳は命には影響しないのです。(梗塞から二次性に起こる脳浮腫などで命を落とすことは十分考えられます。)
では命はどこに委ねられるかと言えば、脳幹部と言われる部分です。「延髄蹴り」の「延髄」は脳幹の一部で呼吸・循環など多くの命に直結する機能を持っております。大脳に加え脳幹も機能しなくなった状態がいわゆる「脳死」でして、移植を前提とした場合に死と同様に扱う事ができるということから見てもまさに「致命的」な場所です。これこそ「重い脳梗塞」です。

実はある程度ご年配の方になると、多くの方で脳の画像診断を行うと梗塞像が見受けられます。しかし大抵症状はなく自分でも気づかないうちの梗塞です。これは脳のあまり重要でない部分に問題にならない程小さな脳梗塞ができているだけ、ということです。これこそが究極の軽い脳梗塞でしょう。

重くもなく軽くもない脳梗塞というのは人によって、施設によって(重症ばかり集まる施設や軽症しかみない施設があるので)、とらえ方が違うでしょう。医療関係者に限定しなければ、それこそ少しでも麻痺が残れば重いと考える人もいるでしょうし、一人で生きられる位なら軽いと考える人もいるでしょう。

今日からリハビリ。リハビリの具体的な手順、ペースについては実はあまり知りません。ただのイメージですが、長嶋監督はリハビリの進みが速そうです。いやほんと、タダのイメージですが。
監督がどのくらい自分のストレスを自覚していらっしゃったのかはわからないですが、まぁゆっくり養生されて、アテネオリンピック問題はご自分の意志次第、でしょうね。周りは実は「できれば長嶋監督にやって欲しい」と思っているし言っているわけですが、それもプレッシャーにならなければいいですけどね。

すっごい関係ないけど、長嶋一茂かっこいいですね。昨日TBS系のさんまのからくりTV見てましたけど、人って顔変わりますね。